読書雑感 2014年
(2014.12月)
9.「銀座ミーティング」高木久子:著(駒草出版)
今月の日経新聞の出版広告に載っていたので購入して読んだ。
サブタイトルにチームマネジメントの方程式とあり、銀座の高級クラブの現役オーナーママが4億6000万円の負債を5年で完済と紹介されている。興味深く手に取ったが、借金返済はクラブを譲り受ける際にダマされたのだが、本人が死に物狂いで働き返済したと僅か数行の記述のみ。本書の内容は銀座の高級クラブ「ベルベ」のオーナーママである高木さんがオープン当初から月1回行っているホステス向けのミーティングの内容を紹介したもの。新聞を読むこと、お客様にメールをし続けること、同伴の回数を増やせという類。ホステスの仕事を真面目にすると、結婚か或はきちんとした愛人になれますと断言するのには少し驚いた。良い加減に仕事をしているホステスは男に騙され、棄てられると。成程…。
8.「氷点」三浦綾子:著(角川文庫)
確か中学3年の受験の頃だったか、我が家にTVは無く、直ぐ近くの親せきの家で皆食い入るようにTVを観た。それが「氷点」である。白黒で13回放映のドラマだったので僅か3ヶ月程である。銭湯がガラガラになる程の高視聴率番組だ。主役の陽子は、黒澤明監督の「赤ひげ」でデビューしたばかりの内藤洋子。僕と同じ1950年生まれで誕生日は3日遅れの5月28日。今でも覚えているのは僕は大ファンだったからだ。TVでは苦悩する父親役に芦田伸介、イジ悪な母親役に新珠三千代。著者の三浦綾子は1922年(大正11年)生まれ。この「氷点」は1964年に朝日新聞が新人、プロを問わず募集した懸賞小説に1位入選して賞金1千万を獲得した。その後人気作家となり数々の作品を発表したが、この「氷点」がデビュー作であり代表作である。著者の三浦綾子は戦後結核で13年間の療養生活を送る。闘病中に支えてくれた三浦氏の影響もあり、キリスト教の洗礼を受け結婚。この「氷点」のテーマは「原罪」である。キリスト教では、人間が生まれながらに持っている罪を指すらしい。物語は旭川で先代から伝わる大きな病院院長の辻口啓三と美しい妻夏枝。夏枝が辻口医院の医師村井と自宅で密会している時に幼い3才のルリ子が近くの川で殺されてしまう。その殺人犯も又留置場で自殺する。ルリ子の死の原因は密会した夏枝に原因があると信ずる啓三は親友の高木の力を借り殺人犯の赤ん坊を引き取り、何も知らない夏枝に育てさせる事で妻への復讐を図る。すくすくと美しく成長していく娘陽子。兄徹はそんな陽子を妹としてではなく異性として愛していく。啓三だけの秘密であったはずが殺人犯の娘だという事実をそれぞれ皆知る事になる。罪の意識に悩む啓三、愛しながらも妹として接しなければと葛藤を続ける兄 徹。ルリ子を殺した犯人の娘である陽子を許すことのできない夏枝。母 夏枝にいじめられても、くじけずに前を見て生き続けていた陽子が遂に服毒自殺を図る。残された遺書に、一途に精いっぱい生きて来た陽子自身にも「氷点」があったと語る。「お前は罪人の子だ」というのが陽子の「氷点」だ。それを知った以上もう生きていけないと。その時陽子は17才。人間が生まれながらに持っている罪が「原罪」なら、僕の原罪は何であろうか。考えたことも無かったが、クリスチャンではない無神教の僕にも「原罪」を問い続けろという事であろうか。i Padに氷点(上)が無料で読めるので、開いてみると面白くて一気に読んだのが12月2日の夜。下巻を読もうと思ったら300円だ。成程うまい商売だ。下巻も今日(12月3日)帰宅して一気に読んだ。今迄、読まなかった事が不思議だ。
7.「N字回復」飯田元輔:著(ディスカバー)
12月8日福岡でのセミナーに出席した。その時の講師のひとりがこの著者だ。リフォーム業界で知られている大阪のリフォーム会社がコンサルタント会社を立ち上げた。その創業に関った著者が経営者と経営幹部の役割を説く。福岡から羽田迄の機内で1時間程で読めるが、この手の本は読む事より実行する力が問われる。しかし、部門責任者として東京営業所開設を任され、歯を食いしばってでも売上を必死に作り、組織作りに苦労した著者はたいしたモンではある。
(9月)
6.「日本の風俗嬢」中村淳彦:著(新潮新書)
日経新聞の書籍広告を見て注文。職種は?収入は?適正は?成功の条件は?何と国内に「35万人」の女性がその職に就いているとはオドロキ。ボク達が若い頃のイメージでは身を落とすというイメージがあったが今では全くそうではなく就職難とは信じ難い。なぜ女子大生と介護職員が急増しているのかを知り思わず考えさせられてしまった。
5.「オーナー社長のための収益物件活用術」大谷義武:著(幻冬舎)
地主さんからの土地活用等資産運用の相談を時々受ける。中小企業オーナーに絞ったタイトルなので購入。事業継承や相続税増税という関門が控えているので参考にはなる。投資回収と物件価格推移を比較した「損益判定グラフ」は役に立ちそうだ。
(2月)
4.「ようこそ、わが家へ」池井戸潤:著(小学館文庫)
銀行マンの活躍を描く事の多い著者の変わったタイトルだと思って書店で手にした。主人公は冴えない50代のオジさん。銀行取引先に総務部長として出向中。ある日のこと、自宅に帰る山手線の代々木駅で、列を無視して電車に乗り込んできた30代らしき男を、勇気を出して叱りつける。ところが、このことが彼の家族を巻き込むストーカー事件に発展していくのだ。会社では営業部長が関わっているかと思われる不正を発見して社長に報告するが、社長は営業部長を信頼して銀行からの出向者である彼を疎んじ、銀行に戻すように裏で交渉する始末。この二つを大きな軸として物語が進むが、妻と息子と娘の協力と理解を得て家族が団結して犯人を突き止める経緯は嬉しく喜びでもある。タイトルの「ようこそ、わが家へ」はこの辺りから来たのか。銀行マンとしての誇りを取り戻した彼が不正問題を解決するのも冴えないオジさんの心意気に拍手。
(1月)
3.「売る力・心をつかむ仕事術」鈴木敏文:著(文春新書)
大手スーパーイトーヨーカ堂に30才で中途入社して、サラリーマン乍らセブン・イレブンを実質的に創業した鈴木氏が語るその30の秘訣。その29番目に“「当たり前」をつづけて「非凡化」する”という項目があった。偶然だが、弊社の今年のテーマは「私は当たり前のことを、きちんと実行します!」(平凡×継続×徹底=超非凡)と宣言した。思いつく事は同じでも、鈴木会長と小生の違いはその徹底さだ。小生もこの「徹底」を胸に刻み、必死で仕事に取り組まねばと教えられる。
2.「下町ロケット」池井戸 潤:著(小学館文庫)
半沢直樹シリーズが大ヒットした著者の、2011年第154回直木賞受賞作の文庫本。480頁を二晩で読ませる筆力は流石だ。宇宙開発機構のロケットエンジニア佃は、ロケット打ち上げ失敗の責任を取り家業の町工場の後を継ぐ。持ち前の技術を活かした製品開発力で、売上を3倍の100億円に伸ばす。そんなある時、上場会社の取引先から特許侵害で訴えられ、敗けた場合には数十億円の違約金で会社は間違いなく倒産する。絶対絶命の窮地は元妻が紹介してくれた有能な弁護士のおかげで逆に違約金を貰う事になる。それもつかの間、国産のロケットを開発する日本を代表する大企業帝国重工から、佃が開発した特許技術を売れと迫られる。佃にとっては大金が入るので社員の大半は喜ぶが、佃は技術者としての夢をかけて自社でロケット部品を製作する道に社運を賭ける。しかし、賛成派と反対派で社内が割れ不穏な空気が…。夢を追うか、社員の待遇を優先するか。中小企業が大企業に技術で勝てるのか。ラスト、種子島宇宙センターから佃の開発した部品を使用した国産ロケットが飛んで行くさまは感動する。
1.「ロスジェネの逆襲」池井戸 潤:著(ダイヤモンド社)
正月休みの間に昨年の流行語大賞にも選ばれた「倍返し」のTVシリーズ「半沢直樹」のDVD全巻(1~6)を借り、一気に観た。面白い!45%以上の最高視聴率の事だけあるワイと感心。この作家の作品は去年「七つの会議」を読み、それも中々面白く読んだ。さて、この「ロスジェネの逆襲」はTVのラストから続く、銀行を救った功労者であるはずの半沢が頭取から直に下った辞令はあろうことか証券会社への出向である。その続きがこの3弾。IT企業のM&Aのアドバイザーをめぐって親会社の銀行と戦う派目になる。IT企業の若手とベテラン経営者の戦い。そこに入り乱れる銀行の人事。半沢直樹の活躍に胸がスッとする。382頁もあるが二晩で一気に読んだ。
今年の「読初(よみぞめ)」だ。